和田さんという男

新潟県岩室温泉に来ました。
この町に立川談志マニアの男がおりました。
隣の西川町で桂三枝の田んぼ“三枝のドリームパラライス”が始まるとなると負けじと“談志の田んぼ”を始めました。
どちらも普段の耕作は地元の方にお任せして、田植えや稲刈りだけ師匠やそのお弟子さんが来て作業をする地域おこしの一貫でした。
桂三枝の田んぼは、師匠の桂文枝襲名とともになくなりましたが立川談志師匠の田んぼは今もありました。
その男の名前は和田義昭さん。
私が西川町のお仕事で新潟県に行く時は、西川町の山下さんに必ず和田さんのお店【ウインズ】に連れてもらいました。
それぞれが地域おこしの田んぼを始めた時、西川町商工会青年部の山下さんと岩室温泉町の商工会青年部の和田さんが同時期の青年部長だったからです。
そんな地域の活性化に力を入れているお二人と、笑いで町おこしをしようと全国の町で公演して回っていたいた私と共通したものがありました。
落語好きだった和田さんとは話も合いました。
和田さんのお店【ウインズ】は、バーのようなスナックのような…ちょっといい音響機材が入っているお店で、落語以外にも音楽に精通していた和田さんは、自慢のレコードからチョイスして素敵な音楽を流してくれていました。
隣がお母さんと奥様がなさってる食堂だったので食べるものもなんでも注文できたのですが、なぜか冷やし中華を勧められて真冬でも冷やし中華を食べていました。
山下さん曰く「冷やし中華以外はうまくないんだわ」
今回も冷やし中華をいただきました。
昨年12月20日の『W襲名披露新潟公演』の時には元気に声をかけていただいたのに、今年の3月25日の西川町での『桂文枝独演会』では車椅子で来られてた和田さん。
当初は喉頭がんと診断されて「俺も談志師匠と一緒だ」なんておっしゃってたが、肝臓へ転移して独演会の1週間後、彼の岸に行かれました。
今回の新潟行きは、そんな和田さんを追悼する落語会をしたいと思って寄せていただきました。
いたずら心のある和田さん。
最後にごっついいたずらしてくれはりました。 
落語の会場となった巻信用組合旧岩室支店。
支店業務が終了してからしばらく使ってなくて冷房設備が稼働しませんでした。
おまけに元銀行のビルなので窓は開けられないようになってました。
さらに、楽屋に用意されていた金庫は、厚い壁に覆われて地獄のような暑さ。
お客さんも演者も汗だくの落語会でした。